Short story ショートストーリー。AkihisaSawada作。

恋する飛行船 Story #009

 

傘を差して自転車に乗る熊と女の子

気流に乱れはない
僕らは二人だけで この飛行船に乗り込んだ
どこまでも高く どこまでも遠くへ
飛行船は向かう

眼下に広がる大陸 美しい山の頂や湖や入り江
あれは羊の群れだろうか?

哀しみと愛しさ 愛しさと欲望 優しさと憧れ
なにもかもすべてがないまぜに、いっしょくたに混じり合う
僕らの恋する飛行船

「愛してるよ、スイートハート」と僕は言った

「愛してるわ、カウボーイ」と彼女は言った

僕らはいつまでも手を握り合っていた

愛はどうなるの?と君が聞いた

でももちろん、そんなことは聞くまでもないことだ

「この飛行船と一緒さ」と僕は言った。
「どこまでも飛んで、やがて星になるんだ」

僕らはやがて 地球の重力から離れる
柔らかな雨が降り続け 僕らは人工衛星のように夢を見続ける

僕らは 羊の群れを見るだろう
フラミンゴたちを見るだろう
キリマンジャロの雪を見るだろう

僕らの 恋する飛行船

 

 

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